2020/10/21 08:35
◎〔アナリストの目〕WTI原油:41ドルのレンジ続く=吉中晋吾氏
6月初旬以降、ニューヨーク原油(WTI)は、内外の強弱材料が拮抗(きっこう)したレンジ相場を維持している。WTI原油を取り巻く内外材料のバランスに大きな変化はない。ボトムは、高水準から解放された米国内原油在庫、大規模経済対策への期待とNY主要株式の上昇が支え、トップサイドに関しては、新型コロナ感染拡大第2波の長期化を受け、来年の原油市場が供給過多に陥るとの懸念が上値をキャップする構図となっている。
原油市場は11月3日の大統領選に対するコンセンサスができておらず、足元、センチメント主導のレンジ相場、レンジトレードが続くものと考える。レンジは、41ドルを中央値として±5ドルのレンジを推移すると予想する。
◇米国内原油在庫が底を支える
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉からみる投機筋の動向に関しては、「6月初旬」以降、マネージドマネーのネットロングが大幅に減少したが、9月初旬に36ドル台を付けた場面のように、レンジの安値付近に接するタイミングではロング増に転じるなど、投機的な動きが消えたわけではない。とはいえ、36ドル台に接した場面では投機のショートポジションも高水準にあったことから、単なる値ごろ感だけではなく、テクニカル(均衡化)の側面も価格上昇に作用したと推測する。
足元、上記レンジ(41ドルを中央値として±5ドル)の80%内におけるポジション取りが続くものと考えるが、現状、当該レンジに対して市場参加者のコンセンサスが出来あがっているため、はしごを外されることがないよう気を付けたいところ。
米エネルギー情報局(EIA)在庫統計に関しては、6月末の時点をピークに高水準の在庫量から解放されており、直近データでは381万8000バレル減少し、4月8日以来の水準(4億8000万バレル台)まで切り下げている。ただ、WTI原油単体のリアクションとしては、上昇要因というよりも、ボトムを支える材料としてみられている側面が強く、買い材料としての側面は、対ブレント原油やドバイ原油のインターコモディティに波及する形で解消されている。
◇サイクルを注視
繰り返してきた言い回しであるが、内外材料がバランスされた適温相場を形成して以降、WTI原油の内部イールドは、平穏な横ばい状態(レンジ)から変化がない。
ただ、“レンジ”には注意が必要である。大前提として、物事にはサイクルがあり、市場参加者の心理状態で振れ幅も変化する。
「当該レンジに対して市場参加者のコンセンサスが出来あがっている」と上述したように、現状、トレーダーは、足元の“レンジを抜く”事にフォーカスしており、それらプレーヤーがサイクルを忘れた時、物事が大きく崩れる傾向にある。
上の流れを踏まえ、当面は、内外の強弱要因が拮抗(きっこう)する中、41ドルを中央値として±5ドルのレンジを推移するものと考える。
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表 https://burginvest.co.jp/
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