goldreport-20200812 (003)

◎夏枯れ相場=8月に入り少し落ち着く

8月に入り、マーケットも少し落ち着いた動きとなっている。

8月中盤は“夏枯れ相場”と言われ「動かない」イメージもあるが、スタンス、取引する時間軸や市場参入する角度によってマーケットの風景も異なる。コロナ禍で明暗分かれたトレーダーも多く、「動いている」かどうかは実際に取引する人間の心理状態次第といったところ。

◇資金循環の全体像把握し、動きだしのタイミングみる

さて、筆者もしばらくマーケットと向き合っていたため、当「ゴールドレポート」を執筆するのは数カ月ぶりになる。マーケットでは、原油市場が、NYMEX内部要因由来の底抜けから適温状態に戻すまで相当の時間を要することとなったが、その間、ゴールドは、金融緩和と財政政策などを背景に史上最高値をあっさりと更新した。

現状、足元の通貨間の資金の循環は、ゴールド、そして欧州復興基金の合意などで動機づいたユーロ、また、現在、これらと同質のセンチメントを共有するビットコインを中心にローテーションされているイメージ。各銘柄が停滞気味の場面では、各市場内(メタル、為替、クリプトカレンシー=暗号資産)における調整で温度差・過熱感が解消されている。ゴールド一本で「上がる下がる」を予想するよりも、上の要領で全体像を把握すると、今の立ち位置、動きだしのタイミングはよりクリアになるかもしれない。

◇一定期間の“慣らし”必要

新常態において、トレーダー、運用者たちの当面の課題は、マーケットの熱量、見聞きする情報、そして実際の売買を通じて、全体像を体感温度で確認することにあるように思える。マーケットではよくある話であるが、本人は潮目が変化した認識はあるものの、不合理と言うか、さまざまな認知バイアスから最終的に誤った選択をしてしまうトレーダーを数多く見てきた。

例えば、熱帯魚を買ってきた際、ビニール袋からすぐ魚を水槽に移すのではなく、一定時間(袋の状態のまま入れて)水槽内の水温に慣らす必要があるように、プロの運用者であっても、いきなり新しい世界に順応することは難しく、一定期間の“慣らし”が必要になる。6、7、8月は、バイアスの存在の確認と修正作業を行っているレーダーも多く、結果として、運用サイドの商いは比較的薄い状態にある。

◇「順番」が回って来たときに仕込む

今後のゴールドとの向き合い方に関して、基本路線は、これまで同様、一定量を一定のリズムで保有するスタンスが良いと考える。ただ、「できる限り良い場所・良いポイントで仕込みたい」というのが投資家の本音。投資とは「ノイズを排除する作業」であることを前提に考えると、おのずとフォーカスすべきエリアは絞られる。ワンショットで一定量を仕込みたいときは、上の「通貨間における資金の循環」で全体的な資金の流れを確認しつつ、ゴールドに「順番」が回って来たときに仕込むのが望ましい。

また、名目金利と期待インフレの温度差を意識することも重要。市場で取引される実際のゴールド価格、米実質金利から導き出されるゴールドの水準、これら二つの価格差がどこに由来するものなのか。今後の指標・イベントを含め、センチメントが、名目金利と期待インフレのどちらに“より”振れているのか。そのあたりも留意しつつ、ゴールド、メタル市場を見る目が必要であると考えている。(了)

※中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト 代表取締役