2019/12/17 10:51

 

ニューヨーク原油(WTI)は、石油輸出国機構(OPEC)プラスの減産拡大、12月13日に発表された米中の第1段階の合 意を受け、一時9月17日以来の60ドル超えを演じる事となった。

 

OPECプラスではサウジアラビアの追加減産が表明され、また、英国総選挙や米中協議が通過した事から、WTI原油市場でも ボトムが1段切り上がり、全体的にリスクオンの流れに傾きつつある。

 

しかしながら、米中合意の詳細は文書化されておらず、先送りされた未解決の問題も多い。現状、NY株式の底堅さを頼りに上昇 基調を維持しているWTI原油にとっては、さらなる上値を追う材料に欠けているとも言える。

 

強弱両方のシナリオを踏まえ、当面は56.5~64.5ドルのレンジを予想する。

 

内部動向を整理すると、まず米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に関しては、最新のデータでは、投機筋が大幅にロン グを増加させる 中、オプションを含むマネージドマネー単体のポジションが約7.8万枚のロング増となっている。11月中旬から12月初旬までは 55~58ドルレンジで短 期売買を繰り返していたが、OPECプラスから米中協議の間、段階的に新規主導でロングを増加させたものと考えられる。57.50ド ル前後で潮目が変わ り、レンジも一段切り上がったようにも感じられるが、プレーヤーたちの顔ぶれにもあまり変化が無いように思われ、新規参入が続かない ようであれば、今回の 新規ロングの手じまいも早まる可能性がある。

 

次にスプレッド/曲線の動向であるが、OPECプラスや米中合意のタイミングでは、バックワーデーションが拡大する等、特に 2020年6月以 降のイールドが瞬間的に反応する場面が見られた。ただ、全体像としては、上述の重要イベントが通過した後は、スポットや特定のイール ドに生じた過熱感や変 化も沈静化しており、現状、WTI原油先物市場全体がバランスよく押し上げられている様なイメージになる。

 

足元は、米中の合意文書関連の情報に警戒しつつ、NY株式の動向をうかがうスタンスが継続するものと思われ、当面は、 56.5~64.5ドルのレンジで推移すると考える。
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表  https://burginvest.co.jp/
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