6月以降、レンジ相場が続くニューヨーク原油(WTI)であるが、直近では、綱引き状態の内外要因を背景に一段と引き締まったレンジ相場を形成している。
米中貿易摩擦の激化を背景とする世界経済への懸念や米シェール主要地区の原油生産量増が上値を抑える一方、国内在庫の取り崩し等が下支えする事で現在のレンジ相場を形成しているわけであるが、現状、米国による対中交渉の姿勢の振れ幅が激しくなっており、これら不透明感を背景として、市場参加者の手控えと共に売買レンジがより引き締まる状況下にある。
足下は53-58ドル、振れ幅は50-60ドルのレンジを予想する。
内部動向を整理すると、まず米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に
関しては、特に直近相場においては目新しい動きや過熱感は無い。4/23頃、投機筋のネットロングが高水準に達していたタイミングで相場もピークアウトしたが、その時以来、投機筋ポジションの目立った過熱感は確認できていない。現在の不透明な相場環境を踏まえ、ポジションを傾ける様な過度なリスクテイクは敬遠し、レンジ内の売買に徹している事が考えられ、これらは、51-57ドルのレンジで投機筋が新規と手仕舞いを繰り返している事からも確認できる。
次にスプレッド/曲線の動向であるが、現状1年内はストレートで逆ザヤを形成している。上述のファンダメンタルや内外部要因を背景にレンジ相場となっているが、スプレッド市場においても同様にレンジを形成している。安定的な曲線で、基本的にはWTI原油に呼応する推移となっており、言い換えると、ファンダメンタルと内外部要因、そしてWTI原油価格に大きな動きが無いにも関わらずスプレッドに変化が生じた際は、売買の判断を行う上での一つの良い材料になると考えられる。例えば、8月の第一週の様に、WTI原油価格に大きな動きが見られた際、スプレッド市場では曲線の伸縮にイレギュラーが生じ、結果として、スプレッド市場における巻き返しの切っ掛けとなった。今後もレンジ相場が続く事が考えられ、同様の傾向が見られた際は、スプレッド市場における転換期のカギになる可能性がある事は留意しておきたい。
当面は50-60ドル、足下は53-58のレンジを予想している。外的要因も重要であるが、基本的には内部要因を軸に推移している事が確認されており、当面はレンジ維持で推移すると考える。