◎〔アナリストの目〕WTI、上昇基調変わらず=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)は、供給不足をめぐる懸念から130ドル台まで上昇する一方、ダウンサイドは93ドルまで下落し、30ドルを超える大幅な値動きを演じた。足元、コモディティー価格の不安定な動きが市場のストレスを高める中、多くのプレーヤーが投資を手控える傾向にある。

ただ、原油相場そのものの上昇基調に大きな変化はなく、一段高を形成するのであれば、上記レンジの中間である110ドルを踊り場にすることも考えられる。

◇高まる地政学的リスク

ウクライナ侵攻への制裁として、多くの国がロシア産原油の購入を禁止し、供給不足が懸念される中、国際エネルギー機関(IEA)は16日、ウクライナ侵攻に伴う制裁の影響で4月以降に日量300万バレルのロシアの石油製品が市場に出回らなくなる可能性があるとの見方を示した。

政治的、地政学的な警戒感が高まる中、米当局が3000万バレルを上回る規模になる戦略石油備蓄の再放出の検討を示し、一時的なセンチメントの落ち着きが見られたものの、イエメンの親イラン武装組織フーシ派によるサウジアラビアの石油施設攻撃のヘッドラインが緩和ムードを相殺。情勢が刻々と変化する中、WTIは情報を消化しきれずストレスをため込んだ状態にある。

◇乱高下の背景に複合的な要因

現在のマーケットは変動要因の濃淡に留意する必要がある。直近では、ロンドン金属取引所でのニッケル価格が高騰し、コモディティーや関連業界がマージンコール(追加証拠金の要求)への対応に追われた。損失補填(ほてん)、地政学的リスクを意識したキャッシュポジション増、証拠金増を背景とした手じまい、年度末のイレギュラーな手じまい等々、乱高下の背景には複合的な流れが折り重なっており、それら要素の濃淡の分析に時間を要していることがトレーダーたちの手控えの要因でもある。

◇取引見送るプレーヤーも

マーケットは3月8日以降、オーバーシュートの部分が剥落した。価格自体は短期間で巻き戻しに転じたものの、出来高は減少傾向にある。前回のアナリストの目(2月15日)では「足元の変化の速さ、価格高騰を大衆が吸収する構造等を背景に、しばらくの間はスプレッド戦略主体での取引が続くものと予測する」として投機がリスク回避的である点について言及したが、足元、コモディティー市場全体に波及した地政学的リスクに対するストレスから、取引自体を見送るプレーヤーも少なくない。

インフレ加速やウクライナ情勢への懸念から、投資家が守りを固める傾向にはあるが、原油相場そのものの上昇基調に大きな変化はない。

一段高を形成するのであれば110ドルを踊り場に、また、修正の際は100ドルがダウンサイドになると予想する。

※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表

https://burginvest.co.jp/

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