◎〔アナリストの目〕WTI、22年は一段高にらむ=吉中晋吾氏

【アナリストの目】
◎〔アナリストの目〕WTI、22年は一段高にらむ=吉中晋吾氏
 11月終盤、新たな変異株への脅威が引き金となり暴落したニューヨーク原油(WTI)は、半値戻しとなる73ドル前後の水準で調整局面にある。
 2022年の相場を占う上で幾つかの留意すべき要因がある。
 ポジティブな材料に関しては、11月中旬以降、再び減少傾向に転じた国内在庫量、そして欧州の天然ガス価格が過去最高値を更新する中、域内の電力会社が電力源を天然ガスから石油製品に転換する流れ、また、国際エネルギー機関(IEA)が、22年の原油消費量が21年比で増加するとの見通しを示したことなどが原油市場の底固めにプラスに作用する可能性がある。
 一方、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染拡大に伴い、多くの国で渡航規制が再び導入されており、22年第1四半期の経済成長にネガティブな影響を及ぼす可能性も考えられる。
 ただ、現状、重症化リスクがデルタ株と比較して大きく低下しており、市場参加者の警戒も緩み、マーケットがリスクオンに転じる可能性もある。オンオフのスイッチの切り替えが急になるほど、リバウンドの際の反発力も高まる傾向にあり、結果、原油市場のボトムの強度が増すことも考えられる。
 22年の相場に関して、WTIを取り巻く内外材料はポジティブな側面が多く、年を通して底堅い動きが予想される。
 ◇投機ポジション、受け皿的には余裕
 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉に関しては、ファンダメンタル同様にポジティブな面が見受けられる。21年は6月末を境にマネージドマネーのロングポジションの減少が顕著となったが、視点を変えると、現状、キャパシティ的にはアウトライト(条件を付けない単体取引)の受け皿に余裕がある状態と言える。つまり、トレンドが発生しやすい素地がある。
 21年、特に後半においてトレーダーたちは、加熱するリスク資産と距離を置く形でアウトライトのポジションを縮小させてきた。戦術は、タイムスプレッドやインターコモディティーに軸足を置き、アウトライトのリスクを回避しつつ市場に参入してきたが、22年は、上述のポジティブな材料を手掛かりに、段階的に(新規アウトライトの)ポジショニングにシフトする可能性も考えられる。
 ちなみに、CFTC建玉データの“TRADER”の動向に関して、21年度は、先行指標の位置付けとして原油価格の転換期を示す場面も見受けられた。また、同指標の巻き戻しやガス抜きのタイミングがインターマーケットの転換期と符合するケースも何度か確認されているが、これらは偶然ではなく、“原油市場”全体のバランス(均衡化)を意識した側面が強い。
 22年の投機動向に関しては、上述のスプレッドのような均衡化に軸足を置く受け身的な取引スタイルから、より積極的にリスクを取るアウトライトへの切り替えのタイミングも注目される。これらの方向性を読み解く上で、上記TRADERが一つの先行指標になる可能性があることも留意しておきたい。
 ◇先物曲線はニュートラル
 前回のアナリストの目(11月30日)では、11月10日以降の下げ相場の入り口に関して「先物曲線(期近と期先の価格差)はWTI価格に先行して逆ざやを縮小してきた流れが確認できる」として、先物曲線が将来の方向を先行指標として示していたことに言及した。現状、先物曲線も原油価格同様にニュートラルの状態で推移しており、改めて22年に向けた調整の局面にある。
 上記材料を踏まえ、改めて22年の方向性を展望すると、原油市場全体のボトムがよりタイト化され段階的な切り上げが考えられる。
 22年のWTIは、21年の高値更新から一段高を狙う可能性があると予想する。
 ※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表 https://burginvest.co.jp/
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