◎〔アナリストの目〕WTI、中銀動向にらみ62~78ドルで推移=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)は、新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)により経済成長や燃料需要が落ち込むとの見方が強まる中、11月26日、10ドル超の下げを演じることとなった。

 

11月終盤、WTIは、バイデン米大統領が5000万バレルの石油備蓄放出を発表し、中国や日本などの協調行動が打ち出される中、右下がりへシフト。一時は70ドル台中盤での巻き戻しも見られたものの、新たな変異株への脅威が引き金となりボトムが崩れることとなった。世界保健機関(WHO)は、変異株の感染力や症状に関して、まだ明らかではないとの見解を示すなど、マーケットの不安を増幅させる可能性はある。

 

ただ、一方では、バイデン大統領が新変異株への対応で十分な用意を整えているとの報を受け、市場では一部巻き戻しの動きも見られている。

 

◇リスクに備える動きも沈静化

 

参加者の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(恐怖指数)は、5月13日の28.93を上抜け3月初め以来、つまり警戒領域とされる30前後の水準まで上昇するなど、感謝祭明けの市場はさらなる変動に備えた動きが鮮明となった。

 

ただ、米サーモフィッシャーサイエンティフィックが、同社製の検査キットが変異株を正確に検出できると発表したことを受け、同市場におけるムードは落ち着いたものとなっている。

 

◇投機のロングポジション、一時的に撤退か

 

米商品先物取引委員会(CFTC)のポジションに関しては、11月16日付までのデータでは、大口建玉やトレーダー動向に目立った動きはない。ただ、前回のアナリストの目(10月25日付)で「~上昇トレンドに転じた9月21日ごろ以降、投機ネットロングは約7万7000枚増となっており、10月12日までの間は75ドル平均の新規買い~」と言及したが、感謝祭明けの26日の当該水準を割り込むタイミングでは相当量の出来高も確認されており、一部ファンドの清算が行われたことも考えられる。また、小口に関しても、80ドル台の分水嶺(れい)において一定の買いが確認されており、これらポジションの転売も米国時間の急落を招いたとみる向きもある。

 

◇先物曲線が先行指標に

 

「感謝祭明け」の相場で、一段とバック縮小を加速させることとなった先物曲線(期近と期先の価格差)は、週明け29日には半値戻しの水準にある。

 

ちなみに、11月以降の先物曲線と原油価格の動向に関して、WTIが11月中旬まで80ドルレンジの横ばいで推移する中、曲線はWTIに先行して逆ざやを縮小してきた流れが確認できる。つまり、今回の一連の下げ相場の入り口に関しては、先物曲線が将来の方向を指し示してくれていたことになる。

 

◇現場の注目は中銀動向

 

現状、「新規ポジショニング」といった局面にはなく、主要中央銀行による利上げ見通しをにらみ、テールリスクを警戒したポジション調整、または日中に特化したスペキュレーションがしばらく続くものと考えられる。

 

レンジは、62~78ドルを予想する。(了)

 

※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表 https://burginvest.co.jp/

 

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